2011-11-04

ホットケーキ

帰り道、
半月がホットケーキ色で、食べかけの半分になったホットケーキに見えておいしそうだった。
だからそれを誰かに言いたくなっちゃって家に着いてすぐ電話をかけた。
そっちの空でも月は同じホットケーキ色なんだろか。
遠い距離はあたしに時々どうしようもないさみしさを与える。そしてそれは苛立ちに変わって空回りな混乱を招く。
なんて厄介なあたしの気分。あたしはあたしのこの気分にすぐ支配されてしまう。



「おいしそうでかわいいよって言いたかった。」
そう伝えたら、きゅうに"安心"がやってきた。

変な意地はいつだって不健康で具合が悪い。体の真ん中あたりをぎゅうぎゅうとさせる。

意地が抜けたら泣きそうになってしまったので目を開いてクぃっとこらえた。
庭をぐるぐる歩き回りながら昨日食べたものと今日食べたものの話を聞いて、あたしはそれを「うんうん」と聞く。それだけなんだけど。ただそれだけのことなんだけどね。
でもそれだけで、さっきまでギューっとカチコチしていた"不安"がじわーと少しずつ溶けてゆく。あぁ。なんか溶けてきたなってホッとする。


こらえた涙は数分後にのどの奥の方をじんわり通過してた。
通過した後の涙の塩っけがその後口の方にやってきて少ししょっぱい。
しょっぱくて舌のつけ根のあたりがキュインとなる。そのキュインに誘われて甘酸っぱい唾液がやってきた。

「またね、」と電話を切った後もう一回月を見上げた。
さっきより大きくなって黄色が半熟の黄身の色になってた。





ホットケーキ。
塩分も感じる、甘くてシロップをよく吸いこんだホットケーキ。
ホットケーキが食べたい。
バターをのせたらすぐに溶け出すくらいの温度で。
それを真ん中で半分にして並んで一緒に食べるんだ。



どうかあの半月がまん丸くなる前に叶いますように。
一緒に食べられますように。

お腹が空いたよ。


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